今年の《危険な暑さ》真っ盛りの鑑賞会、冒頭の「お〜 さぶっ(寒)」はかなりな違和感だ (笑)
印象的なラストシーン、《りん》があっちへ行くべきか、壁の内に止まるべきか‥‥、淡々と、そして容赦なくこの難問を突き刺す。最近の実の親やママ父に虐待されて亡くなった事件報道の子供たちとシンクロするから、なおさら彼女の行く末を案じると辛くなる。
子は親を選べないという当たり前の現実がある。
表向きはよき家庭、それぞれが父、母、子という役割を演じ、もはや愛情の代用品しか見当たらない。愛を知らずに育った子はやがて親になり、愛を知らぬ子を再生産する。この作品は、法律とか正義とか常識に隠れて、いや巧妙に隠されて、見えなくなっているものを掻き出そうとする。まるで化石の発掘みたいなものだ。隠されているかも知れないと感じられるだけましだ、いずれというかもうすでに、そんな感性は退化してしまったのかも知れない。でなければ、親が子供を虐待死させるはずはない、愛する人の大切な「モノ」を殺めることはできない。
《血の繋がり》って 《家族》って 《幸せ》って 《優しさ》って 《生きる》って???
弱いもの、貧しいもの 要領よく生きられないものの目線から見ざるを得ないのだろう。そう、確かに暗いところから明るいところはよく見える。
社会的に最下層の人間は否応なく差別され、阻害されて世の中の隅に追いやられている。優しさに飢えてきたから、ヒトには優しくなれるのかも知れない。
是枝監督の 「そして父になる」や中国・香港合作の「最愛の子」は、生みの親と育ての親の曖昧さを描き、「親の愛情」という「危険物」をテーマにする。今回は、血の繋がりのない疑似家族が、一刹那ではあるが、虫がわきそうなボロ屋で、家族としての安心感や信頼感、それぞれの心の充足を得ることができる。互いに癒し、癒されるのだ。他人だから気遣いをし、理解をしようとする。「貧しいけど豊か」というほどきれいな現実ではないが‥‥(笑)
テーマはやや拡散したか?いや、今度の作品は、もしかしてテーマは見た人が選ぶように仕組んだのかも知れない。
それにしても 安藤さくらの人間臭は格別だ。
ずれたスェットパンツのお尻を掻いてるボサボサ頭の「100円の恋 」の一子(イチコ)が、結婚という貧乏くじを引いてここにいるように自然につながってしまう。(笑)
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