『変わり続ける。変わらないために』

『変わり続ける。変わらないために。』

  赤黒に白抜きのなぐり書き風決意文ドーンと目に入る。

suchmosの新作アルバムTHE ANYMALの駅の宣伝ポスターだ。
  以前、彼らの『stay tune』がそこかしこで流れると、そのシティPOPな感じが青春時代の曲とシンクロして小気味よかった。郷愁にも似ている感覚だ。
 このsuchmosやNulbarichは、突然現れ、横文字をかくもスマートに歌詞に違和感なく埋め込む新しさがあった。でも僕の中では、結局サザンも同じだったような気がする。サザンのそれは日本語でも日本語じゃなかったから。

 さてこの『変わり続ける。変わらないために。』(KEEP CHANGING TO STAY TRUE)

  新しいアルバムの曲「in the zoo」を聴く。アコースティックな気だるいブルース、きっと今までの路線とは違うのだろう。ファンでもないし、ずっと彼らの曲を聴いてきたわけではない私にはコメントできない。「変わっちまったのか」と嘆くファンもきっといるのだろう。でもポスターは言う。変わらないために変わり続けるんだって。

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  僕はこう考える。もともとsuchmosはいろいろな音楽の要素をもってるグループだったんだろう。その多面体のただ一つの面で反射した光が、例えばstay tune、でもそれによって彼らが規定されたり、縛られるものではないはずだ。彼らは多面体だから変わり続けられるのだろう。それだけ才能もあるのに違いない。TO STAY TRUEは〈本来の自分たちに忠実であるために〉の意味であれば腑に落ちる。『変わらないために』はキャッチコピーのためのコトバかも知れない。

  セカオワのアースチャイルドの歌詞に同じフレーズがある。こちら2013年。

僕らはEarth Child
世界中を冒険飛行
どこまでも行こう
この夜空に眠れない君を連れて
「夢」の世界へ
Earth Child
世界中の暴言非道
もしも自分に向けられても
変わらない為に僕らはいつまでも
変わり続けるよ

パチパチパチ 拍手!
「世の中や社会や国が変わっても、時に姿かたちを変え続けて、『子ども』のままで夢に向かっていく」って言ってる。
わかりやすい。さすがfukaseだ。(上から目線? 笑)

  よく聞く言葉に「伝統は改革の連続」というのもある。創業1520年室町時代から480年続く老舗
虎屋17代当主 黒川光博は言う。
「虎屋はいつの時代も伝統の技術に新しい感覚を盛り込み、最良の原材料を使用して最高の品質の和菓子を作ることに傾注してきました。店の歴史を新しい感覚でアレンジするところに、成長や展開のチャンスが生まれます。しかし、歴史や伝統を否定し全て壊すことではありません。《伝統とは革新の連続である》という信念のもと日々努力をし、時代の流れを読みつつ常に前進しなければならないと思っています。」と。

  教育の世界でも同じことはある。時代の鏡である児童、生徒が対象だからむしろ際立っている。変化する時代のニーズや教育観に合わせながら、コアとなる理念や伝統を守ろうとする。
名門と言われる伝統校は煩悶し、『変わらないために変わり続ける』道を模索する。

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