アンティキ・サポーティとはイタリア語で「伝統的な味」。日比谷線広尾駅と西麻布交差点のちょうど中間くらいの場所にある。かの名門御三家の麻布学園方面から下ってくる鉄砲坂が外苑西通りにぶつかる角だ。このお店の原型がイタリア半島の南東、長靴のかかとにあたるプーリア州の小さな村モンテグロッソにある。超人気の名食堂と同じ店名で2013年日本で開店した。調度品だけでなく、プーリアの店で修行した腕のいいシェフも直輸入のようだ。
一口にイタリアンというが、ここはスマートなリストランテというより、地方の伝統的な家庭料理のオステリアという趣だ。
サービスの方に、「秋田の郷土料理の店を日本料理店としてイタリアに出店した感じですかね」と尋ねたが、答えは返ってこなかった。笑
イタリアはローマを中心に、上にミラノ、フィレンツェ、ヴェネチアがあり、下にナポリやシチリアがある。北イタリアと南イタリアだ。日本同様、南北に長い国なので、北と南の違いは大きい。気候や風習、人々の気風、そして食文化と。ナポリはオリーブオイルとトマトを多く使ういわゆるイタリアンが主流だ。ナポリから北東に車で1時間くらいのこのプーリアは、2つの海に面しているので、海沿いは新鮮な魚介を食材にするが、内陸ではジビエなどを使った山の料理も一つの特徴であるらしい。そして、この地方では、たくさん食べさせることこそがもてなしの気持ちの表現のようだ。
3種類のランチコースのうちピエトロランチにする。
5種類の前菜が、次から次へと出てくる。決して回転率を上げるためとかではない。いろいろなものをどんどん食べさせたい。このスピリットがプーリア流なのだ。
パスタは見せて説明してくれた数種類の中から、灰色の〈焦がし小麦のオレキエッテ〉を選んだ。小さな耳を意味するこのショートパスタはプーリア地方の特産だ。
メインは、馬肉のブラーチェ。ブラーチェはグリル料理のこと。黒い耳たぶのようなパスタに、牛でなく馬肉のグリル、イタリア料理を今までと少しちがう角度で堪能できる。店に飾られている古ぼけた農具の類も、農業国イタリアを感じる。連想するのは、ミラノあたりのイケメンではなく、ニッカポッカを履いてフォークを持った農夫だ。どれもイタリアだ。
2種のドルチェとエスプレッソ もうお腹いっぱい。
きっとプーリアには痩せた人が少ないんではないかと思う。笑
雰囲気、お料理の数、値段に満足。しばしの異国の文化を楽しんだ。
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