昨年の3月、世界的な音楽家の坂本龍一さんが大腸癌で亡くなった。その間際に、この再開発の見直しを求める手紙を東京都の小池百合子知事らに送っている。都知事はやんわり筋違いとばかりやり過ごす。その後、坂本氏の遺志を継いで様々な分野の人が再開発に対する反対や懸念を述べる。9月にサザンオールスターも「Relay~杜の詩」を発表した。開発反対、伐採反対のプロテストソングかと思いきや、冷静な話し合いの重要性を説いて唄う。そこにはむしろ理性的な桑田佳祐がいた。
ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関日本イコモスは、9月、事業者の環境アセスメント評価の誤謬を指摘し、事業の許認可をした東京都に対して計画の見直しを要請した。危機にある文化遺産を守るための「ヘリテージ・アラート」である。日本イコモス国内委員会の理事で都市環境学者の石川幹子氏は文化としての緑の重要性を説き、開発の中止や見直し論を展開すし、反対派の論理的な支柱となっている。これに対して事業者は反論し応酬する。さらに今年3月には日弁連も工事の停止を求める声明を出した。現在は東京都が事業者側に求めた樹木保全の具体策の提出が遅れていて、伐採はまだ始まっていない。都知事選を待ってまた何かが動き出すのだろう。
僕は新しい「何か」に期待すると言った。でも正直言うと期待外れのつまらないものになるという懸念は大いにある。国立競技場も然り。大手デベロッパー主導になると、短いスパンでの投資分の回収という制約の中、「優秀な」サラリーマン設計士集団が中心になる。日本には世界的に評価の高い建築家が数多くいる。建築のノーベル賞といわれるプリッカー賞受賞数も世界一だ。しかし彼らが力を発揮するのは日本よりフランスを始めとする海外なのが実情である。建築家を中心として、施主や地域そして行政、デベロッパーとの話し合いの中で将来像のパースを描いていく、そしてそれが可視化されている、そんなプロセスが一番いい。最近の東京は同じような高層の箱物で、ちっともおもしろくない。また新しいニセモノができてしまう。
やはり、ジングウガイエンをうきうきと散歩したい、そしてさらなるこの百年の計を孫に、そして世界に自慢したい。都心には歴史ある緑の森が代々保存され、最先端のモダンなビル、素敵なカフェなど個性的な建物が見事に調和しているって…。
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