学校=行かなければいけない場
  ーたのむよ 教師たち(1999.10)

学校の話題からひとつふたつ。

 ある日、区立A中へ転校する子(中3)のお母様が、校長先生とはじめて面談をした際に「うちの学校はレベルが高いので、しっかり勉強して下さい。」と釘をさされたという話を聞きました。校長先生のお話はほとんどそれだけだったということでした。九州から転校して、お嬢さんが学校生活に馴染めるかどうか不安な矢先に、いきなり校長先生から勉強のことだけを言われたので、面食らってあたふたと塾を探しに来たのでした。

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 中学3年生といえば、高校進学という現実の壁に出会い、将来のこと、学校のこと、親のこと、大人のこと、社会のこと、自分のこと、友達のこと、・・・など様々に未解決の「重要課題」を有象無象(うぞうむぞう)かかえ始めている年代です。実際、数年前になりますが、区立B中に転校してきた中3の女子(成績が良い子でしたが)はクラスに入って1ヶ月くらいして、「何であなたが転校してきたのよぉ、私たちの内申下がっちゃうじゃない。」と言われたこともありました。(でもこれはどうやら、仲良しになった友達たちが、彼女の成績が良いことを誉めて冗談まじりに言ったらしいのですが)まぁ、とにもかくにも、公教育の長が中3の途中で始まる新たな学校生活に贈る言葉としては首をかしげてしまいます。

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 区立C中では、今年から試験範囲表(中間や期末試験の範囲を明記した紙)の配布を廃止したようです。以前にも書いたことがありますが、この紙のおかげで、これが配られてからでなければ勉強しない生徒が増えていたのは実感していたところです。生徒にとっては、「よ~い、どん!」の号砲といったところなのでしょうか。どんないきさつで廃止になったかはよく分かりませんが、試験範囲は授業でやった範囲ですから、なくてもいいものでしょう。

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 しかし、重要なのは、授業中やった範囲・レベルからの出題にできるだけ限って欲しいということです。区立の中学校の試験が学習の到達度を見るテストである以上、そして学校の成績が、内申点という形で高校入学への強力な「力」を持っている以上、この部分では先生方は慎重に考えて作問して欲しいと思います。でなければ、できる子はずっとできるし、できない子はずっとできないことになってしまいます。例えば中3になると、中間や期末試験では学校で進んだ範囲の他に、授業ではやっていない1・2年の復習問題や難しい応用問題が出題される場合があります。これでは、志望する都立のために学校の成績を上げようとして、苦手な科目の試験範囲を精一杯頑張ったとしてもなかなか高得点に結びつかないのが現状です。その教科が苦手な子や1・2年生は少しさぼっていた子が、中3から本気で頑張っても挽回することは不可能になるわけです。もし授業中やった範囲から出題した結果、相対評価として成績をつけるのが難しいのであれば、その評価自体を見直す必要があると思います。

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 公教育と塾の共存声明、学力低下、不登校10万人、学級崩壊、2002年からの学習指導要領の大変革、都立高校隣接区域の拡大、公立中学校の学区域の撤廃(一部地域)公立6年一貫校の構想、大学の一部民営化、公立教師の適性チェック・・・・・挙げればキリのないくらいさまざまに問題を抱え、流動する教育界にあって、学校現場では、今まで「学校」の中で当たり前であったこと(規則や行事などを含めた学校運営のすべて)の一つ一つが、これからの時代に価値あるものかを検証し、そして先生や教師自ら、いったい何をすべきかを自問自答していかなければいけないはずです。21世紀の新しい学校を創るために。

(MJ通信  雑感  1999.10)

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