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教育コラム 雑感
ーある日の小5の理科の授業 実況版

   4年生の終わり 5年生の直前の子供たち‥‥‥例えてみればカイメンかな「海綿」。ポリエステルやウレタンで作られた台所で見かけるふつうのスポンジでなく、天然素材、形も様々できっちりカットされてない。この乾いた海綿が、知識や教養、大人の一挙手一投足までスッポリ吸収する。高性能だ。

   ある日の理科の授業中
「しずかにしろ!」
    男子Aが、お喋りの男子Bを制止する。クラスの中の自浄作用。僕は集団の中のこんなやりとりは実に健全だと思っている。だから少しだけ静観

  「Bはしゃべるとバクハツする。」と男子C。  これはやや意味がわからないが、Cなりの評論ではある。(笑)

 誰か「バクダンだな」それに続いてまた「げんしバクダンだ。」

ポンポンと言葉が行き交う。

 《げんしバクダン》は少しだけ気になるが‥‥生徒たちは屈託無く一瞬の言葉遊びを楽しみ、潮時もわかっている。「ハイ! いいかテキスト見て」と、いつもは、この辺で場面チェンジ、なんせこの授業で教えなければいけないことはまだまだある。今回のテーマは「月」。

  少しの時間だけ課外授業をしてみる。というより生徒たちの波長にシンクロさせてみる。インプロビゼーションだ。
私「原子爆弾って何が悪いの?」
女子E「人を殺すから」
皆「‥‥‥。」
私「でも、 戦争の武器は全部そうじゃない。殺すための道具だよ」
男子女子 某 「大量に殺す」
男子D「ホウシャセンじゃねぇ」

 《放射線》というキーワードは意外に早く出てきた。Dはよく知っていると思う。どうして覚えているのかにも興味をもつ。単に理科が好きなのか、それとも戦争での被爆や東日本大震災での原子炉融解を何らかの形で学んだのか、家族と、テレビで、博物館で、自由研究、いや4年生の自由研究にはやや無理もあるという気もするが‥‥。

  私「大量というのは、ふつうの爆弾をたくさん落とせば同じ効果だよね、原子爆弾が何で他の兵器よりいけない爆弾とされるんだろう」
「放射線、そうよく知ってるね。で、放射線て何なの? 何で放射線がいけないの?」                                                                                                            と、少したたみかけてみる。もう少し彼らの知識の奥を垣間見たい。

誰か「だってホウシャセンが巻き散ると、なくなるまですごい時間がかかる」
誰か「土地がなくなる」
東日本大震災のイメージが強い感じだ
私「時間かぁ」「そうだね」
皆「‥‥‥。」

  僕の中で、一応 答えの用意があった。それは彼らの答えの中にある。あとはそれを少し整理してやればいい。一つは、【大量】、放射線が拡散することによって、兵士や戦略拠点だけでなく無作為に人を殺めることになる。そして【時間】、被爆すると子々孫々まで被害が連鎖する。もちろんその地帯の生きとし生けるものすべて壊滅し、死の土地になる。化学兵器も含めて非人道的といいわれる所以だ。

  でも、『原爆を含めた核兵器がなぜ悪いのか』ということは『核兵器を使わなければ他の兵器を使うのはいい』『人道的な兵器って』さらに『その核兵器が、戦争の抑止力となっている』というオトナの理屈‥‥、そんなこと考えると僕が何かを語るのは時期尚早だと思った。お互いに。だから‥‥、


 私「ハイ! 32ページ見て」と理科の授業に戻る。
私「月は夏と冬で高度が違う。冬の月は空高く見える」
生徒「どうしてですか?」

   皆、上質の海綿だ。いい滋養を与えないといけない。

2019.03.21更新|MJ通信