素敵な森の美術館。
前日の嵐が嘘のように、雲ひとつない蒼い単色の空
こんな日、テラスのランチは贅沢だ。
高級なランチを頂くという意味ではない。
澄んだ空気と寒くも暑くもない陽気、少しだけ色づいた森と山を前に、BGMは鳥のさえずり
希少な確率で起こり得た幸福な場面に感謝というわけだ。
「モネとマティス もう一つの楽園」
ポーラ美術館の企画展を一通り観た後で、企画展に合わせたランチメニューにのっかった。
《ジヴェルニーの麦わらに見立てた一皿》
ノルマンディーはブルターニュと並んでクレープの本場、そしてフランスが誇るムール貝の一大養殖地。
モネは1883年43歳の時、このノルマンディー地方の小さな町ジヴェルニーに転居し、ここが終の住処となる。これから少しずつ自宅の庭を拡張、整備し、やがて「モネの家」となるのだ。モネは、1890年から家の周りの畑の積みワラを描くことに集中する。ごくふつうの田園風景の中、こんもり積まれたワラに当たる光や陰影は刻々と変化する。シンプルなモチーフを凝視することを課することを日課とした。これがモネの連作の始まりとなる。
《子羊の香草パン粉焼き プロヴァンス風》
フランス北部生まれのマティスは、首都パリの猥雑さから逃れ、南仏の光に恋し、27年間ニースに住んだ。セザンヌやルノアールを始めとして、画家たちは南仏を好む。モネも南仏アンティーブで作品を描いている。
ラム(子羊肉)をニンニク、オリーブオイル、そしてハーブで味つけたものが、イタリアや北アフリカの影響を受けた典型的なプロバンスの伝統料理だ。
《オレンジとカシスのガトーマルジョレーヌ 軽いアイスクリームを添えて》
ガトーマルジョレーヌは、基本的には、ヘーゼルナッツをホイップクリームと混ぜたものとヘーゼルナッツをローストしたペースト状のクリームを何層かに積み上げたもので、フランスの伝統的フランス菓子である。これは、フランス料理界に革命的な新風を吹き込んだ料理人フェルナン•ポワンがオーナーシェフであったリヨン郊外ヴィエンヌのレストラン「ラ•ピラミッド」で、メインが終わっって最後に出すスペシャリテとして彼が開発したのが最初だ。この菓子は世界一の味と賞賛され、ラ•ピラミッドもミシュランガイドで3つ星を取り続ける。伝説の料理人、店、菓子なのだ。でも、モネやマネがそれを食べたかはわからない。
そのクラシックな菓子を、オレンジとカシスと合わせたいきさつまではわからないが、酸味と甘味が効いて、印象的な美味しさだった。マティスのリュートは言われなければ、ウィンブルドンで使ったラケットでも模したのかと思う。まあ大成功!
デザートの中に、トコトコと来訪者が歩いてきた。小さな蟻だ。リュートを越えてアイスの上を伝わる。「おっと」と私が言うと、給仕の若者も目を丸くする。横にいる妻は、替えてもらうように催促する。若者は困っている。いや別に困っているからじゃないが、僕は「このままでいい」と言った。外で食べるってこういうことだ。えーい 君も頂こうか 笑
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