映画「怪物」のラスト　　

　激し過ぎるほどの嵐の雨がようやく止み、すべてが溢れる光に包まれる

　優しいピアノが僕の魂まで浄化してくれる感じがする。

　3月に旅立たれた坂本龍一の〈Aqua〉の調べがエンドロールまで続いていく。僕が毎日のように聴いていた曲だ。

　是枝監督はこの〈Aqua〉を映画のラストに使うことを確信していたと知った。

　アクア、水、水溶液、雨、水たまり、一滴、大河、森、生命(いのち)、自然、循環、wash away, 再生……。

　ハラミちゃんの《ハラミ定食2》の新メニュー〈雨〉を聴く。ピアノの音色は様々な雨模様を目の前に写し出してくれる。

　（ポツポツときたぞ。洗濯物を取り込まなければ）（どしゃ降りだー。走って軒下に雨宿り）（ポタポタと樋から漏れる雨粒に頭を濡らして戯れる子どもたち)（ワイパーフル稼働でも前が見えん　川のように道に水がたまっとるぞ)……。

　日本列島は南を流れる暖流の黒潮による上昇気流の影響で、同じ緯度の国や地域に比して雨が多い。気候も景色も植物も生き物も彩り豊かなのは、この恵みの雨のおかげだ。でも最近は温暖化や黒潮の蛇行によりゲリラ豪雨、線状降水帯など雨が凶器になっている。

「怪物」とは雨のことかもしれない。