無知と過保護が仇になる
ー「花が枯れた!」の巻

 今年はどの鉢の花も花つきがよかった。ここ数年、園芸店の方や植木屋さんから草木の生育が活発と聞くことが多い。よく伸びるということだ。温暖化のせいであろうか。そんなことを床屋さんで話していたら、そういえば髪もよく伸びると店主はわりと真面目に言っていた。生き物だから同じかも知れない。まあ頭皮と土は違う気もするが。笑

 梅雨が遅れたせいもあり、いつにも増してわが家の草木や花たちは元気なのかも知れないが、一つ変えたことがある。今まで冬には安物のビニールハウスの中に鉢を置き直すだけであったが、それだけでは冬越しが難しく枯れてしまう。そこで今年はパネルヒーターをハウスの中に置いた。そのお陰か、春先から猛烈にスタートダッシュしてくれて、次から次へと開花のバトンリレーを披露してくれた。疲れ知らずという感じだ。きっと冬の温度管理が功を奏したに違いない。

 さて、いっぱい花を咲かせたので、『彼ら、さぞやエネルギーを消耗していることだろう、追肥を施すことにしよう。いや施してあげよう。』やや上から目線になる。笑

 赤い小さく可愛いサルビアセージの花、濃い青色が目を惹くアメリカンブルー、優しい水色のルリマツリ、僕は夏の青い花が好きだ。パンジーの寄植、ベコニア大盛りの2鉢、額アジサイ、ローズマリー中心に少しずつ増やした葉物の寄植え、すくすく育っていたシコンノボタンの苗……、針やプランターの大きさはまちまちだが、これらに手のひらたっぷりの肥料の粒を、パァーっと景気良く巻いてやる。節分の豆まきさながらだ。

 いわゆるお礼肥(のつもり)である。肥料は888の化成肥料。ハチハチハチとは、重要な3つの肥料の要素N(窒素)P(リン酸)K(カリウム)が全体の重さの8%ずつ均等に配合されていることをいう。それぞれの要素はそれぞれ葉、実・花、根の成長に働きかける。鶏糞などの有機肥料がゆっくり作用する遅効性に対して、この肥料は一般に速効性のあるものだ。

 肥料を施して数日すると……、みるみるうちに撒いた鉢の草花が半分以上枯れてしまった。

 あゝ やっちまった 本当に申し訳ないことをした。花たちに…である。しでかした。「後悔先に立たず」とはこのことだ。

 肥料を購入した園芸専門店の店主がとても親切に教えてくれた。やはり一番は量が多過ぎたことによるようだ。粒の置く場所も問題だそうだ。直接葉や茎にあたると肥料焼けが起きる。この肥料焼けはどういう変化なのか、なぜ生命が途絶えるまでになってしまうのかはまだ謎解き途中だ。〈ナメクジに塩をかけると水分が出て死んでしまう〉僕の中ではそんなイメージではあるが

 地上部に広がった葉の先端くらいの真下の位置の土に割箸などで穴を開け、そこに肥料の粒を埋め入れるのもひとつの肥料のあげ方であると店主は教えてくれた。こうすると水に溶けた肥料成分が下に浸透していき、根の先端がそれを探しに伸びてくると言う。先端に感度の良いセンサーをもつミミズのような形のクネクネミクロロボットを勝手に想像してしまう。笑

肥料の成分を探すことによって発根が盛んになり、結果的に根が育つということになる。リンゴなどの果樹農家ではできるだけ少なく肥料を与えると聞いたことがある。同じ理由かも知れない。

 いずれにしろ過保護が失敗の原因だ。そして無知と。しかし反対に放任だからよいわけではない。実際10度以下の気温で放っておいたら冬を越せないものも多くある。しかし欲しいもの必要なものを過度に与えてはいけない。過保護は危険だ。少し足りないくらいが丁度いいのだろう。八分目を与えて、残りのニ分はあえて飢餓状態にしておく。ストレスが成長の糧になる。

そして植物の特性を知り、手を離しても目は離さない。

 花を育てることに子育ての教訓が潜む

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